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住基ネット:本人情報は誰のもの?
[MSN-Mainichi INTERACTIVE]
住基ネット訴訟:住民側の請求棄却 「金沢」とは異なる判断--名古屋地裁
住基ネット:個人情報削除認める、全国初 金沢地裁

住基ネットを巡る訴訟の判決が金沢地裁であったばかりだが、名古屋地裁で同様に訴えのある住基ネット訴訟では、住民側が請求を棄却された。
住基ネットを巡っては金沢地裁が30日、プライバシー権を保障した憲法違反と認定し、個人情報の削除を命じている。一方、名古屋地裁は4月28日、住基カードの発行の差し止めを求めた訴訟で合憲の判断を示すなど、地裁段階で異なった判断が相次いでいる。

名古屋の裁判では、住民側が「最終意見陳述の機会などが奪われ、裁判を受ける権利を侵害された」など、住基ネットの本論とは別の論点もあるようだが、裁判官の住基ネットに対する基本的評価がまだ定まっていないという印象を抱く結果となった。

28日の名古屋地裁は、「違憲と言えず、費用と効果の問題は市長が判断すべきものでない」と住民側の請求を棄却した。
判決で加藤裁判長は、プライバシー侵害について「(住基ネットの情報は)本人確認情報に限られ、思想・信条などの情報に比べ秘匿性が必ずしも高くない。住民基本台帳法や条例で定めた事務処理以外の目的で用いることも禁じられている」と、違憲性を否定。カード発行が費用に見合うかは「改正住基法の審議過程で論議されるべきだ」とした。また住基ネットの情報漏えいの危険性については「外部からの攻撃は極めて困難。現在の技術水準で考えられる対策が講じられている」と述べた。

一方、金沢地裁の判決では、住基ネットの本人情報がプライバシーに関わる個人情報であるとし、自己情報コントロールの対象となると認定。
原告側が主張した、不正アクセスなどの住基ネットの危険性については、「具体的に立証されたとまでは言えない」としたが、「住民のプライバシーの権利を犠牲にしてまで達成すべき高度の必要性があるとは認められない」と結論づけた。

両裁判では、(1)本人情報が重要な個人情報か (2)住基ネットの危険性 という基本認識がいずれも食い違っており、今後出される各地での同様の裁判の行く末も不透明になったと言えよう。これらについて、私はこう考える。
  1. 本人情報が重要な個人情報かどうかは、情報が利用可能なものかどうかで評価が分かれると思う。一例として、現在も閲覧可能な住民基本台帳を業者がめくり、DMを送って来ることを迷惑だと感じる人ならば、氏名と住所だけでも重要な情報と考えるだろう。この住民基本台帳の閲覧も昨今は問題視されていることを考えれば、住基ネットの本人情報が重要なプライバシー情報でないとは言えないだろう。
  2. 長野県が侵入実験を行うなどした結果、住基ネットの危険性は証明されていない。しかし、未来永劫の安全を保証できるものでもない。人為的ミスなどで、今後いくらでも事故が起きる可能性はあるとも言える。住基ネットの構築で、事故の可能性を増やしたとはいえるだろう。
    だが、住基ネット自体が未だ活用が進んでいないため、事件も事故も起きていない。住基ネットの活用の場が増えれば、本人情報の利用価値も高まることになり、事故が起きれば大きな被害にもつながる。

現状で判断すると、住基ネットの利便性が殆ど進んでいないことから、総じてコストの割には役立たずなシステムで、情報漏洩の危険ばかり増やしたもの、という評価をせざるを得ない。
(だからといって、国民総背番号制なんぞに活用されるのもご免だ。)
住基ネットの情報を、国が定める省令や条例で国にとっての利便性に供与されるというのも、一市民の立場から見れば「便利」というより「危険」と感じてしまう。裁判所には、是非とも個人情報が誰に帰するものかを見極めた判決を出して欲しい。

[P.S.]裁判で使われた資料が下記にて参照可能。
電子政府・電子自治体情報セキュリティ関連資料提供プロジェクト
by kiyoaki.nemoto | 2005-05-31 21:06 | ニュース
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